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『サムライチャンプルー』は、2004年にテレビ放映されていたアニメーション作品です。
俺は2005年になってこの作品を知りました。 そのころレオパレスに住んでいて、レオネットにてアニマックスが見放題だったのです。そこでたまたま見たのがこの作品。 感性を刺激されて調べてみれば、『カウボーイビバップ』で名を知られる渡辺信一郎氏の監督作品でした。なるほどと納得。
「チャンプルー」はごちゃ混ぜとかごった煮とか、そんな感じの意味のようです。 ゴーヤチャンプルーってそういう意味なのね。
武士道やら琉球的なものやらヒップホップな作風やらとまあまあタイトルが示すとおり雑多な世界観がうまくまとまっておりますわ。 これは「侍」ではなく「サムライ」の世界ですね。そのくせしっかりした和風の良き雰囲気も純粋なまでに取り入れている。
ああ、ジャズって和風に合うんだ。
なんて発見をさせられてしまう一品でした。
で、十二月に北陸の家へ帰ってきてから、自由に使える時間が増えたのでこつこつとレンタルショップで借りて見ていたのですが。
とうとうDVD全十三巻二十六話を鑑賞し終わりました。
久しぶりに気持ちのいい作品に出逢えた、という気分です。
観賞後の爽快感はなんとも言えず、浸りつつも思考を進めるに充分なキャパシティを持った作品でした。
ムゲンとジンの力に頼り切って旅をしてきたフウが、どのような結論を選ぶのか。 ラストへ向かってそういう方向性に話が進みます。
この作品の優れたところは、最後まで結論が確信できないところです。 二十六話の十五分経過時点で、ここからいかようにも結末を変えられると思ったときにただただ「凄え」と気付けば笑っていました。
ムゲンとジンはこのまま死んでもおかしくない、いや死ぬほうがむしろ自然。 死んでも物語は結論づけられるし、一人残されたフウがこれからどう生きるかというところで話が終わるという手法もあります。
もちろん、ムゲンだけが死ぬ、ジンだけが死ぬ。 はたまた二人は瀕死で生き残り、フウが死ぬ。
いくらでも選択肢はありました。 その、どれに転んでもおかしくない話の運び方を、そのラストギリギリまでやっていることに俺は素直に感動したのです。
もちろん、三人とも生き残るという可能性もあります。 しかし生き残った後にフウがどうするかはいくらでも考えられます。
ムゲンを選ぶ、ジンを選ぶ。
また三人、を選ぶ。
俺は渡辺監督がどういう答えを導き出すのかが楽しみでした。
そして、結末を見たときになんとも「あっけない」と思ったものです。 あっけない。今まで引いて引いて引きつけた割に自然と当たり前のように物語は進み、終わっていきます。
ご丁寧に「おわり」の文字まで表示されて。
しかし煮え切らない名残惜しい気持ちを抱えながら、俺は確かに納得していたのです。そうか、こうしたかと、満足していたのです。
フウは一人で生きることを選びました。 そして再び、一人で生きられるようになったと確信したころ、彼らに会うのでしょう。そしてそのとき、もしかしたらどちらかを選ぶのかもしれません。
どちらにせよもう三人で旅をすることは恐らくない。 その点に俺は名残惜しさを感じ、あっけないと思ったのです。
まあ結論についてあまり多くを語るのも野暮なのでこの辺で。
ただもう一つだけ言わせてもらうと、オープニング後半で屍の山が映り、ムゲンとジンのシルエットが立ち上がり、フウの笑顔が浮かびます。
それを見たとき、この物語はこういう結末になるんじゃないかと思ったのです。ラストはそういう話になるんじゃないか、限りなく死に近い状況からなお生きる姿を描くのではないかと。
そしてそのとおりになったときに、やはり渡辺氏は凄いと思いました。二十六話のアニメーションでは、当初の予定が大分ずれることも多いでしょうに。
しかしこの作品といい、宮崎駿氏の作品といい、構成が綿密な割に大事なところが感性的な作品が増えているように思います。 時代の傾向、と一言で片づけるのは簡単ですが、要は、みんな語りすぎる物語に飽きたのではないでしょうか。
懇切丁寧に展開を説明する物語に、それをコピーする模造作品。 そういったものに慣れてしまった消費者は、次第に予定調和に飽きてしまいます。いや、元々は予定調和ではなかった作品まで、予定調和に感じてしまうほど人々は物語に触れすぎた、とも言えます。
だから、そのハイレベルな物語解釈力に合った物語が求められているのかもしれません。 今までのルールに縛られない、語りすぎない物語。 言葉以外の何かで、でも確実に感じさせてくれる物語。
アニメに限らずそういうものが増えてきたような気がしますし、また、俺も実はそういう作品を書こうとしていたりするのです。
その他にも様々な観点で色々なことを考えましたが、この辺にしておきます。 非常に思考を刺激してくれる素晴らしいアニメーションでした。
世の中にはまだまだ凄えクリエイターがたくさんいる。 |
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2006.1.20記。 |
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