・鴻上尚史『ものがたり降る夜』白水社

セックス。

という単語をおおっぴらに口にすれば何故か眉をひそめられたり苦笑されたりする世の中です。
何となく理解はできるものの根元的な考えでは「何故?」と思っています。


セックスというのはもの凄い共通言語(?)で、少なくとも日本ではどこに行っても誰とでもセックスの話題ができます(まだ生殖行為のできない子どもは別ですが)。
ですが、何故かセックスの話題を避けたがる人がいます。あと、公共の場所では言ってはいけないことだという認識があります。おおっぴらに考えを語ると嫌悪をあらわにする人もいます。

何故?


と考えていた俺に、ひとつの解釈を提示してくれたのが『ものがたり降る夜』です。

大学に入学した直後に本屋で立ち読みしたこの戯曲。
始まり方に俺は度肝を抜かれました。

金が欲しくてオヤジと寝る女性と、寂しくて若い男を買う中年女性と。
二人のセックスシーンから物語は始まり、それが終わると男性の生殖器の形をしたかぶり物をかぶった全裸の男たちがわらわら出てきてダンスをするのです。
「なんじゃこりゃぁ!」
と本屋で叫びたくなった気持ちをご理解いただけるでしょうか。


これ、ある意味では俺が一番良いと思っている戯曲です。
それは俺が下ネタ好きだからではなく、人一倍性欲があるからではなく、ごくごく当たり前に人が持っている欲求と、常識観とをしっかり表に出して、その上で解釈しているからです。

あなたはセックスが好きですか。
俺は好きです。大好きです。俺は自分の考えるセックスには常に幸せ、というイメージがあります。

幸せなもので、幸せでないならする必要はない。しなくていい。
でも、それでもしたいのならそれはそれでいい。したいだけすればいい。


要は、セックスを拒否する必要はないだろ、と思っています。
もっとざっくばらんに、本能の赴くままに語ればいいと思っています。

ちょっと違いますが、恋人同士でセックスの話ができるかどうかというのは結構重要だと俺は思っています。
今日のが良かったかどうか、とかどこがどういいか、今度からどうしたいか、とか。
「セックスは秘めなければいけないものだ」とか「はしたないものだ」とかいう観念がセックスを嫌悪させる原因です。オープンに語ればこんなに楽しいものはありません。


という考え方の俺としては、この戯曲をとても応援したい気持ちにかられるのです。
セックスに対して正面から、前向きに、オープンに、大いに語り合える世の中になってほしいと心から思います。


セックスは怖くない。
セックスは気楽にできる。

セックスに決まりはない。
セックスは異常じゃない。

セックスについてはっきりした考え方を持っていい。
セックスは趣味になり得る。


下ネタ最高!
これはちょっと違う……。

2006.8.19(土)記